当事務所の10年間の
実績のあらすじです
部位別のポイント集です。大まかな考え方としましては、基本的にはどの部位でも客観的な数値の設定があり、それに沿って認定がなされる仕組みではありますが、しかしながら下記のカテゴリが下へ行くにつれて段々基準があやふやになっていくような運営がなされているのが実際です。
これまでの当事務所での実績を踏まえて概括的に記載しております。
個別のご相談はお気軽にお問い合わせください。
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五感系(視覚・聴覚など)の障害
●眼
・代表的な疾患
網膜色素変性症、緑内障、糖尿病性網膜症など
・ポイント
眼の障害認定は大きく分けて、視力障害と視野障害に分かれます。
視力は、例えば3級の認定対象は両眼の視力が0.1以下となった場合です。矯正視力が認定対象となりますから、なかなか厳しいです。ただ、検査者や審査担当者の主観に左右される要素が極端に少ない分野なので、その意味では大変公平な分野ではあります。
視野については、ゴールドマン視野計などの機器で測定します。今までの請求事例から考えますと、請求者さん本人の自覚レベルと検査結果が大きく乖離している場合も少なくなく、実際に専門の設備で検査をやってみないとよくわからないところがあります。社労士としてもまずは診断書をとってみてそれを拝見してみないと何とも言えない分野です。
また、眼の障害は、片目だけでは基本的には受給は難しいです。(辛うじて、一眼の視力が0.1以下になった場合は障害手当金とするとの規定はありますが)いずれにしても、診断書は専門の設備がある眼科でお願いしましょう。
●耳
・代表的な疾患
両感音性難聴、メニエール病など
・ポイント
補聴器を使用しない状態での聴力により等級が認定されます。オージオグラムと語音明瞭度の指標がありますが、いずれも実施すべきと思います。聴覚も眼と同様ですが、専ら客観的な数値により等級認定がなされますので、その意味では大変公平な分野です。また、眼と同様基本的には両耳の障害を以て等級認定がなされます。専門の設備が整っている耳鼻科で書いてもらいましょう。
●言語
・代表的な疾患
脳性麻痺などによる構音障害、脳血管疾患による失語、咽頭摘出、など
・ポイント
咽頭全摘出ならば2級という規定があります。しかし、そういうはっきりした事情がない場合には、4段階での障害の程度に応じて等級が決まるシステムになっています。しかし、当事務所の経験上ではこれが非常にあいまいというか、難しい部分でありまして、医師に診断書の依頼をしても、かなり納得のいかない診断が下りることもしばしばです。
例えばおっしゃっていることの半分くらいは聞き返さないといけないくらいの方でも、一番軽い「日常会話が誰とでも成立する」との評価が下ることもありました。これは、評価の仕方があまりに抽象的ということもあって多くの医師の中でも評価基準が定まっていないことが原因なのかもしれません。極論を言いますと、100人の医師に1~4までの評価を尋ねると恐らく評価がばらけるだろうなという状態の方もいらっしゃいます。
ですので、診断書を依頼する場合は、言語障害の障害認定資格を持つ医療機関を中心に、いろんな病院に根気よくあたってみるというのも一つの手かもしれません。
●そしゃく、嚥下
・代表的な疾患
歯の欠損や顎の障害、クローン病など
・ポイント
食事内容に応じて7段階で評価が分けられており、それに応じて等級が定まる仕組みとなっています。例えば全粥または軟菜以外は摂取できないような場合は3級です。診断書を依頼する場合は、口腔外科や歯科などが中心にはなると思いますが、評価自体は素朴なものなので障害の原因となった疾患の担当科など他科でも対応可能な場合があるだろうと思われます。
●鼻
鼻の障害については、仕組み上ほとんど認められるケースがありません。鼻を欠損して鼻呼吸障害がある場合がやっと障害手当金相当となるのみです。なお嗅覚がないというだけでは認定の対象となりません。おそらく嗅覚がないというだけでは、不便は不便でしょうけれども、そうだからと言って普通の生活ができないとか仕事ができないとかという事態が想定できないためなのでしょう。なお、当事務所では取り扱った事例がございません。 -
肢体の障害
上肢(手指~肩)、下肢(股関節~足指)、脊柱・体幹、要するに内臓以外で首から下の部分で何らかの障害がある場合がここでの対象となります。
総論的なポイントとしましては、まず、痛みは原則として認定の対象にはなりません。ですので、よく勘違いされておられる方もおられるのですが、疼痛の辛さをアピールするのは通常ならば逆効果ということになります。それのみならず、個人的には納得がいかない部分ではありますが、痛みによる機能障害も同じく認定の対象にはならないという運用が実際には行われています。例えば膝が痛くて曲げられない、ということでいくら可動域制限があったとしても、その可動域制限は痛みを原因としているものであるから認定の対象にはしない、という風にです。
診断書を依頼する場合には、通常は整形外科でということにはなりますが、実際には障害の原因となった疾患は別の科だったりする場合も往々にしてありますので困難を伴うケースもあります。以下いくつかの代表的なケースごとのポイントです。
【傷病別ポイント】
●事故など外傷性の障害
上記の疼痛の問題は、例えば、脊髄性の麻痺による四肢の障害などの場合でしたら問題にはならないのですが、事故を起因とする場合は疼痛性の機能障害の方も多くみられます。そのような場合、生活の困難さと実際の等級認定に解離がみられることも多くあります。
また、頭部にもダメージを受けて、ご自身は身体的な障害のみ認識されている場合でも、高次脳機能障害が疑われるような症状を呈しておられる方も少なからず散見されます。そのような場合は当事務所からも専門の病院での検査などをお勧めさせていただく場合がございます。
●脳血管疾患による後遺症
脳出血、脳梗塞などによる半身麻痺も、当事務所で多くご相談・ご依頼のあるケースです。この場合、上肢下肢を含めた総合的な判定がなされます。障害者手帳の等級認定のような「上肢で○級下肢で○級で併せて○級」というような手法での認定はなされません。
また、脳血管疾患の場合、もちろん肢体での認定は主に考えるのですが、その他にも高次脳機能障害や失語症やその他の後遺症についても注意してみています。
●人工関節(変形性股関節症など)
人工関節を挿入置換した場合には、基本的には3級となります。それ故厚生年金での申請ならば確実性は高いケースということになりますが、基礎年金での申請であれば普通はそのことだけでは受給は難しいということになります。もちろん、人工関節の場合でも、2級となる場合はありますし、当事務所でも実績がございますが、両関節に挿入置換した上でそれでもさらに相当予後が悪い場合ということになります。
●リウマチ、膠原病などの全身疾患
リウマチなどの場合、通常は主にはリウマチ内科へ通院しているというケースが多いわけですが、基本的には肢体障害の診断書は整形外科の領域ですので、その意味で申請に困難が伴うことが多いです。
一旦は主治医であるリウマチ内科の医師に申し出てみて、それで対応してくれるのであればそれでもいい場合もありますし、場合によっては整形外科へも並行して受診し、そこで依頼することが必要な場合もあります。
●パーキンソン病
パーキンソン病患者さんからのご相談・ご依頼もこれまで幾多応じて参りましたが、総じて非常に苦労しております。また、一般的にはパーキンソン病とは非常に重篤で生活に困難が伴う疾患であるという認識があると思われますが、2級以上での認定例というのは残念ながら当事務所では得られていないというのが実情です。
理由としては、パーキンソン病の場合服薬により一時的にでも活動が可能になるわけですので、例えば薬が切れると歩けないというような場合でもそれは常時の状態ではないという判定が下されがちであるためです。
またそのような中で医師としても治療の効果がまったくないようにも書き辛いものがあるように感じておられるケースも散見されました。あるいは、もちろん障害年金ですので64歳までの人しか対象とならないわけですが、多くのパーキンソン病患者さんを主に診ている医師からすれば重症化しているもっと高齢の患者と比べると相対的には非常に軽いじゃないかと診ているケースも多いからなのかもしれません。
●線維筋痛症
平成24年に4つの認定困難傷病に関する照会様式が定められましたが、線維筋痛症はその一つです。当事務所でも認定事例がないわけではないのですが、現在のところの当事務所の感想としましては、兵庫県内で線維筋痛症を診ている医師には障害年金制度自体に理解のある方が少ないので難しいという印象です。
障害年金の申請における仕組みがある程度整備されたとはいえ、この傷病自体がまだまだ医学界の中でもよくわかっていないところが多くあるのだろうという印象もあり、そのことも原因の一つかもしれません。 -
精神の障害
平成28年に精神の障害に係る等級判定ガイドラインが策定され、更にその後各都道府県でバラバラに行われていた障害基礎年金の審査が東京の障害年金センターで全国一律で行われるようになりました。これにより、それまで特にかなり兵庫県では不安定だと感じていた精神疾患の審査が相当程度安定的なものになったという実感があります。
精神疾患ではっきりしている傾向としましては、上記1や2のいわゆる外部疾患とは異なり、一般就労している場合には少なくとも2級での認定は難しい場合が多いということです。この点はもうコンセンサスとして定着していると言って良いと思います。当事務所ではその上で就労との在り方をどのようにすべきかということを、個別の依頼者さんの前向きな生活のために心がけるようにしています。
なお、身体障害の場合は、身体障害者手帳の等級と障害年金の等級はまったくリンクしない仕組みになっているのですが、これに対し精神障害の場合は精神障害者手帳と障害年金の等級にかなりの相関関係があります。それ故申請に関するご相談にあたっては、精神障害者手帳の有無および等級なども参考にさせていただいています。以下類型別のポイントです。
●感情障害(うつ病、双極性感情障害など)
当事務所全体の相談内訳としても最も多いパターンです。発症原因別で言うと、就業環境(長時間労働、パワハラ、配置転換など)によるもの、あるいは産後うつが慢性化している女性からのご依頼の割合が多いように感じています。
●統合失調症
医学書では、発症時期は10代後半から遅くとも20代後半が多いとされており、当事務所でのご相談ご依頼もやはりほとんどその時期に発症している方からです。それ故、20歳前の障害基礎年金での割合が多いですが、20代前半が初診の方の場合で納付要件を充たさないという事例も散見されます。
●発達障害
近年発達障害という概念も昔と比べると相当浸透してきてはいまして、例えば友人や職場の上司同僚などから発達障害の可能性を指摘されて検査して発覚した、というような契機での発覚でというようなご相談も多くなってきていると感じます。また、県内のある発達障害の検査を行っている病院も、検査に何ヶ月待ちというような状況であるということも聞きました。
そのような中で障害年金の申請を希望してのご相談も多いと感じますが、例えば二次障害がなく単に発達障害と診断されたというだけでは認定は得られにくいです。よって、診断されたから直ちに障害年金が、というような発想ではなく、ご自身の特性を見極めた上でご自身にあった生活や就業の在り方をまずは色々と一通り模索していただき、障害年金のことはそれを経てからお考えいただきたい課題だと思います。
●知的障害
重度~中等症の知的障害の方の場合、障害年金は養護学校などで得た情報やサポートを元に20歳から問題なく受給されている方が多いのだろうと感じています。特に、20歳前から特別児童扶養手当(特児)を保護者の方が受給されている場合、20歳の段階で比較的スムーズに特児から障害基礎年金への切り替えができる仕組みにもなっているためでもあろうと思います。
●てんかん
まず、てんかん発作が継続的に発生している方が認定の対象となります。その上で「てんかんで障害年金を受給するのは難しいですか?」という質問をいただくことはありますが、日本年金機構の定めるフォーマットや認定の仕組みが非常にいびつなところがあり、また、各医師の中でも混乱も見られる状況にあり、そういう意味で難しいところがあるとは感じています。
即ち、単純にてんかん発作があるということだけでは認定が難しい仕組みとなっており、当事務所でも審査請求事案で何度もそもそも仕組みがおかしいということは主張しましたが、まったく合理的な回答が得られていないというのが実情です。そういう状況でありますので、ともかく現時点では、申請にあたってご不安があればまずはご相談ください。
●高次脳機能障害
脳血管疾患や頭部外傷により、認知機能に影響を及ぼす高次脳機能障害という病態があることが近年知られるようになりました。当事務所では、特に事故などで身体障害があるため障害年金を受給したい、ということでご相談にお越しになられた方でも、話をしていると、どうしても会話が成立しないような症状を呈しておられるという方がこれまでたくさんいらっしゃいました。
難しいと感じるのは、社労士の立場から高次脳機能障害を疑ったとしても、まずはそのご本人に認識がないというところが困難に感じるところですし、また少なくとも兵庫県内で高次脳機能障害を専門に診てくれる病院も極々限られているというところも難しさを感じるところです。
さらに、事故から何年も経過した方について、ある病院の相談窓口では「いずれにせよそんなに年数が経ってから検査しても高次脳機能障害かどうかは判定ができません」という風にも言われたことがあります。社労士としては歯がゆいところですが、今一つ医師自身にも認識が広がっていないところも感じますけれども、身体障害だけではなく、幅広い視点での申請やご助言ができるようにとは日々心掛けています。
※神経症について
いわゆる神経症については、原則として認定の対象とはならないという扱いになっています。これがどういう合理性のある規定なのかというのは、年金機構の中でも整理ができていないところもありますし、当事務所でも医学的な合理性は疑問があるところだという認識ですし、あまりに古い考えが元になっているようですから医師の中でも見解が分かれ得るところなのだろうと思います。
ただ、いずれにせよ、現段階では障害年金の分野においては神経症系の病名単体ではまず認定が難しいということは言えます。当事務所にご相談いただいた場合は、すぐにの対応は難しい場合もありますが、病歴や生活歴や今行っている病院や飲んでいる薬などをお聞きした上で今後の方針をご助言させていただくように心がけております。 -
内臓疾患(内部疾患)
内臓疾患で、特に様式が定められているものをこのカテゴリーでご紹介します。内臓疾患の場合、人工的なものを使用していないと認定が得られないのではという固定観念がある方も多いですし、医師の中でもそういう方が多いようにも感じますが、必ずしもそういう訳ではありませんので、一度当事務所へご相談ください。
【部位別ポイント】
●呼吸器
肺気腫、ぜんそくなどが挙げられます。また、在宅酸素療法実施中であれば3級とするという規定があります。呼吸器疾患の全体での受任の割合はかなり少ないというのが実態です。いわゆる65歳までの現役世代の方で、呼吸器疾患が重篤化しているケースが相対的に少ないというような事情などがあるのかもしれません。
●心臓
拡張型心筋症、肥大型心筋症、弁疾患、不整脈などが挙げられます。ペースメーカーや人工弁などの人工的なものを使用されている場合は等級の見通しが立ちやすく、当事務所でも豊富な実績があります。またそれのみならず、当事務所では人工的なものを使用されていないケースでの認定実績も豊富にあります。
●腎臓
腎臓でのご請求の場合、やはり人工透析導入ということでご依頼になるパターンが多いです。人工透析も2級とする旨のルールとなっており、等級の見通しが立ちやすいところもあり豊富な実績があります。また、透析に至る前の段階でも3級などで認定されるという実績もあります。注意点としては、やはり糖尿病性での腎疾患の方が多い印象ですから、初診日自体がかなり古くなるケースが多く、注意が必要です。
●糖尿病
単なる糖尿病である状態だけだと認定は難しいのですが、インスリン療法中で一定の場合には3級に該当する場合もあります。この点は、平成28年から認定基準が変わっており、従来は血糖値やHbA1cの値が重視されていましたが、現在ではCペプチドの値や意識障害や入院の頻度など糖尿病のコントロール不良により日常生活にどの程度支障が出ているかということに主眼が移ってきています。いずれにせよ、合併症がない状態だと2級というのは難しいところだと言えます。
●肝臓
肝硬変や肝炎などが挙げられます。当事務所では、肝疾患による申請も相談も全体の中で見ればかなりの低い割合にとどまっております。治療法がかつてよりもかなり進化していることが理由としてあるのかもしれません。
●血液
白血病や血友病などが挙げられます。
●免疫疾患
診断書の様式上はHIVが念頭に置かれています。 -
その他
上記のカテゴリのどこにもあてはまらないものがここで処理されます。
・五臓六腑系でいうと、消化器疾患、泌尿器疾患(人工膀胱、人工肛門)などです。
・悪性新生物(がん)もここで扱われる場合も多いですが、当事務所での実績が特に多いものとして乳がんが挙げられます。
・難病(当事務所の実績ではキャッスルマン病など)
・特殊疾患(化学物質過敏症、慢性疲労症候群)
などなどがあります。
このカテゴリがあるために、基本的にはあらゆる傷病に対応できる仕組みになっています。ただ、あまりに様式がフリーなので、審査も一層曖昧になりがちです。
※社会的な意味での障害というものは、障害年金の認定の対象にはなりません。例えば労災保険では、顔面に酷いやけど痕が残る場合などのような、社会的な意味で対面上の支障があるような場合でも認定の対象にはなりますが、障害年金の場合は規定がありません。