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障害年金判定の地域間格差について ~最新版~

平成28年頃まで存在していた問題点

(ホームページリニューアルに伴い過去の記事をまとめ直しました)
厚生労働省は平成22年~平成24年の3年間で、新規に申請があった障害基礎年金の審査結果について、都道府県ごとに調査を実施しました。調査の結果、審査件数全体に占める不支給判定の割合は大分県が最も高く、最も低いのが栃木県で、実に20%以上の差があることが判明しました。

次に不支給割合が高かったのは茨城県で、佐賀県、兵庫県と続きます。ある県では障害年金が受給しにくく、ある県では受給しやすい、という不条理な決定がなされていました。

現在の審査体制

この問題点は、平成29年4月をもって完全に解消されています。概要は以下のとおりです。

『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が策定されました(平成28年9月~)

障害基礎年金の審査が各都道府県事務センターレベルで行われていたことにより、特に精神障害において、それらの間での基準がバラバラだったのではないかという問題認識の下、基準が明確化されました。ガイドライン自体の解説につきましては別の機会に行いたいと思いますが、これによって統一的な処理が期待できると言われています。

都道府県事務センターでの審査から障害年金センターでの審査に(平成29年4月~)

また、住んでいるエリアにおいてそれぞれの事務センターにて請求が審査されていたのが、現在ではどこにお住まいの方でも東京の障害年金センターに請求書類が送られ、そこにおいて一括で審査がなされるようになっています。これにより、精神障害以外の障害も含め、どこに住んでいるから有利不利という問題は完全になくなりました。

ここに至るまでの総括、当事務所の感想

騒がれていた問題がようやく解消され、特に審査が非常に厳しい(というかおかしい?)と言われていた兵庫県ですが、当事務所は当然ながらご依頼のほとんどは兵庫県在住の方からですので、ようやく申請が行いやすい体制が整ったということでこれまでよりも多くのご依頼をお受けしているところです。実際昨年度までは対応に苦慮するようなやり取りをご相談者様としていたのは事実です。
例えば、ある方から
「障害年金の申請の為に、大阪に引っ越そうかとも思っていますが、それは有効な手段だと思いますか?」
と問われることがありました。もちろんそれはこちらから提案したわけではありませんが、当職は
「はい、障害基礎年金の認定の可能性が高まるかどうかという観点のみから言うと有効だと思います。」
と正直にお答えしたこともありました。

各自治体の独自給付ならともかく、障害年金とは、保険料も全国一律の国の制度であるのに、審査をバラバラに行っているせいでこのようなおかしな話もせざるを得ない状況だったのが腹立たしいというか苦痛でした。ですが、様々な公表されている情報、これまでの実績、こっそり(?)聞いた情報などを総合するとそういわざるを得ないところでした。
昨年9月にガイドラインが策定された段階で、これで公平性が増したというような論調もありましたが、当職は懐疑的でした。皆がそれぞれの物差しを使っていたところ、いや同じ物差しを使いましょうね、というだけでは、その物差しを各都道府県で独自の使い方をすることは考えられると思いました。

保険者(政府)の年金予算の考え方についての考察

まず前提としてですが、国には予算というものがありますし、その中で年金の予算はこれだけというものもあるわけですが、老齢、遺族、障害の3種類の年金給付のうち、老齢と遺族については支給条件がはっきりしている(ある年齢に達したかどうか、亡くなったかどうか)場合が多いものです。それに対し、障害年金の場合は、支給条件が比較的曖昧なものです。

以下はとりあえず当職の推測ですが、であるものだから、政府としては障害年金を全体の予算の調整弁と考えているのではないかというのは推測します。
例えばですが、年金の予算が1兆円だとして、老齢と遺族で計9000億円の申請があり、障害で計2000億円の申請があるとします。この場合老齢と遺族というのは、政府としては大部分は支給を拒むことは難しいものであるのに対して、障害の場合は屁理屈をつけながらでも拒もうと思えば拒めるものです。(要するに、死んだ人間について「いいやこの人はまだ生きているのである!」と言い張って遺族年金の支給を拒むのはさすがにあり得ないですが、それに対して障害の場合は基準をあえて曖昧にした上で「いいやこの人の障害の程度は軽いのだ!」と言い張るという方がまだ政府としては言いやすいということ)そしてその結果、2000億円のうち半分の1000億円だけ認定して、全体の予算の1兆円のうちにおさめようというようなことになるのだろうと思います。

兵庫県が厳しかった理由の考察

そして、各都道府県での審査が行われていたわけですから、当然権限のあるところに予算もあるとおもいますので各都道府県ごとに予算が割り振られるか、それに近いシステムだったのであろうということも推測します。その場合通常は人口比に応じてということになりましょう。

この地で日々相談をお受けして思うのは、権利意識がはっきりされている方が神戸市を中心として多いということ。これは全く悪いことではありません、申請受給する権利がある以上はそれを行使するというのは至って普通のことです。逆に、郡部へ行けば行くほど、権利意識が希薄というか、「やろかな?いややめよっかな?」みたいな、「この人はどうしたいのだろう?」という方の割合が多い印象です。実際一通り話をして悩まれた挙句「障害年金をもらうというのはお国に迷惑をかける恥ずかしいことだと思ったのでやめることにします」と言われたこともあります。権利を行使するしないは個人の自由ですのでこれも悪いことだとは思いませんが、都市部の方でこのような反応をされる方は今のところ皆無でした。であるがゆえに申請件数や対人口比での割合も多かったのではないかという風には推測します。

一方、公表された支給率の都道府県別の割合で当職が目についたのは東京は高いという点なのですが、やはり進学などで上京してその後病気になった場合などは一旦は地元に帰るという方が多いと思われますが、それで帰った後に申請するということになるとやはり東京以外の支給率は下がり、結果東京は上がるという仕組みになっているのではないかと思いました。実際当事務所の御相談者でも同じような状況の方は多くいらっしゃいました。

また、他に考えられる要素としましては、昨年ある障害者団体の方とお話をしてお聞きしたのですが、特に神戸では市の施策として障害者福祉に重点的に取り組んできたという歴史があるとのこと。その結果他県からも障害を持つ方が多く移ってこられたという傾向もあるとのことで、なるほどそうだとすれば、対人口比率での申請率そのものは他県より増加することになるでしょうし、そのことも関係があるのではないかと思います。

それから、もう兵庫レベルでの審査は行われていないということもあって思い切って言いますと、当職は直接お会いしたことはないですけれども、会った人からの話しでは、審査医の方の資質というか、評判というか、そういうものは芳しいものではなかったようであります。だからそれが受給率に反映されているのではないかという話も聞きましたが、しかし、それは卵が先か鶏が先かという話で、受給件数を下げようと機構が判断したのであえてそういう人たちを任命してきたのかもしれません。

おわりに

ここ数年、兵庫県は認定率が低いらしいぞという情報だけが独り歩きしていた感もあり、元々この話とは関係のない厚生年金で申請される方ですらも「認定率が低いとのことなので心配です」というご相談をされることも多かったような状況でした。
現在は基礎年金も含めてその問題は解消されましたので、特にここ数年不支給になった方などは再チャレンジしてみる価値がある場合もあるかもしれません。お気軽にお問い合わせください。