精神
初診日・特殊事例
統合失調症
統合失調症により、初診日について洗い直して認定が得られた事案です。更にその後の審査請求で1級に等級が変更となりました。
事例
女性・41歳(申請時点)
申請:平成26年
結果:障害厚生年金2級(認定日請求)
審査請求:障害厚生年金1級(認定日請求)
平成17年に腰痛などの身体症状を訴えてA病院に入院。A病院は整形外科であり、主病名はヘルニアとされているがあまりに愁訴が多く、実際にはよくわからないことが多い。そして、入院中に不眠なども訴える。また、何も所見がないのに「自分は脳脊髄液減少症である」という訴えを頻繁にするようになり、検査するがやはり異常なし。
同院入院中に、当時勤務していた会社は退職となる。
その後平成19年に退院するも、脳脊髄液減少症の訴えは続き、遠方の脳脊髄液減少症専門の病院へ受診するも違うと診断されて納得がいかず、自傷行為に及ぶ。そして、しばらくしてから家族もどうしようもなくなり、B病院精神科を受診させると統合失調症と診断され、医療保護入院となる。入院中も脳脊髄液減少症についての訴えや医者が勝手にカルテを書き換えているなどの妄想が続く。
しかし、数か月の入院治療の結果、妄想などの陽性症状は消えて退院するが、陰性症状は現在まで持続し、自宅療養の日々が続いている。
当事務所による解決 裁定請求
当事務所へご相談がある前に、一度ご家族らで申請を試みたことがあったとのことでした。その際にネックとなったのは、初診日と納付要件のことでした。
一通り今までの経過をお聞きすると、身も蓋もないことを言うと結局はA病院がヤブ医者であるため、多数の身体的愁訴について外科的なアプローチしかしておらず、統合失調症など精神症状については疑いもせずに長期間入院させていた、そしてそのうちに勤務先退職=厚生年金資格喪失となっており、加えて国民年金の手続きもそういう時期だったのでできないまま時間が経過した、というのが真相だろうと思いました。
そして、はじめて統合失調症と診断されたB病院初診時点では納付要件を満たしていない、ということで頓挫してそのままであったようです。
お話をお聞きした後、5分5分ですが、A病院を初診としてであれば納付要件はクリアできる上、厚生年金での申請もできますのでということで、ご依頼をお受けしました。
そして、A病院でのカルテ開示をした上で、現在も通院しているB病院の主治医の先生ともお会いしてA病院受診時からの経過についてお話をしました。主治医の先生はA病院での出来事をそれまでご存じなかったようですが、カルテに書かれている内容などをお伝えすると、統合失調症の症状としての身体的愁訴がこのころから始まっていたのだろうという流れで診断書を書いてくださりました。このことが認定に向けて後押しとなったと思います。
そういうことで申請に及びましたが、やはり五分五分かなと思っていました。
A病院で取得した受診状況等証明書の病名はやはりヘルニアですので。しかし、何百枚もあるカルテの中で精神症状が認められそうなところを列挙し、コピーも添付したうえで申請していました。特に妄想のメインのところの脳脊髄液減少症の訴えについてはA病院入院時からあったものですので、Aを初診として認定されて然るべきではないかとも思いました。
そして結果としては、最高の形で認定されることとなりました。Aの初診ではなく、A入院中に不眠を訴えていた時点を初診として認定されました。これにより、当初は事後重症で申請していたものを、更に認定日請求をすることが可能となり、追加で認定日ごろである、A病院に入院時の診断書も添付して申請できました。
そして、認定日請求で障害厚生年金2級と認定され、遡及分まで含めて受給できることとなりました。
最初は申請することすらできないと諦めていたご依頼者様は大喜びでした。
当事務所による解決 審査請求
こういうことは初めてなのですが、もう十分満足だと言っているご依頼者様を口説いて、1級の認定を求めて審査請求を提案しました。認定日1級を求める余地がまだあると思ったからです。
なぜなら、障害の程度はあくまで主位的には認定日時点でのものを認定対象となりますので、認定日時点では陽性症状も顕著なものがあり、医療保護入院であり、症状としては最悪の時期だったからです。実際に診断書でもそのような評価となっていました。
そして、審査請求に及んだところ、やはり1級で認定されまして、これでようやく私も満足しました。
やはり当初は難しいと思える案件でも、よくお話を聞いて、丁寧に情報を集めてことを進めていけば良い結果が得られることが往々にしてあるということを再認識しました。