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糖尿病・腎臓・心疾患

初診日・特殊事例

審査請求

糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症

認定日にはまだ人工透析を開始していなかった認定日請求の事案です。

事例 男性・57歳(申請時点)
申請:平成28年
結果:障害厚生年金1級(認定日請求)

平成15年に別疾患での術前検査がきっかけで2型糖尿病と診断される。翌平成16年には合併症として糖尿病性視神経症と診断される。その翌年の平成17年には、右目はほとんど失明し、左目も拡大鏡がなければ見えにくい程度となる。また、腎機能も急激に悪化し、平成19年から人工透析を実施する。その数年後、障害年金という制度があるということを知ったが、申請には至らなかったが当事務所サイトを見てご依頼されることを決意された。

当事務所による解決 裁定請求

ご依頼された段階では既に人工透析実施であり、かつ視力も右目は失明で左目も相当低下している状況であったため、少なくとも事後重症請求としては1級の障害厚生年金を受給することがほぼ間違いなくできるであろうと思われました。
そして更に認定日請求により遡及して過去の年金が支給されるかという点については、可能であればやりますが一般的には難しいケースではなかろうかと当初は思いましたので、その旨ご依頼者様にはご説明しました。
というのは、通常は糖尿病の場合、症状の進行が緩やかな場合が多く、障害認定日(初診から1年半後)には特に目立った症状がなく、重篤化するのは初診よりもっと後になってからというケースがほとんどであるからです。(コラム「障害認定日請求(いわゆる遡及請求)について」参照)。

この方の場合、初診が平成15年で障害認定日が平成17年であるのに対し、人工透析開始が平成19年ですから、人工透析をしていることによる認定日請求はできないというのははっきりしています。なお、この場合平成19年まで遡及することを求めるというような申請方法はなく、あくまで平成17年にどうだったかということがまず問題になります。
ただ、この方の場合、障害認定日時点に人工透析までは至っていないものの、その当時でも腎臓の数値的なものや視力も顕著な症状を示していたということでしたので、そこに賭けてみて、あわよくば3級ででも遡及分が受給できればなぁという風に思いました。
そして、当時受診していた病院へ赴きましたが、この病院とのやり取りが非常に困難を極めることになります。
まず、当時の診断書の作成の申し込みに加えて、やはり10年以上前のことですので情報がたくさんあったほうが良いと思い、カルテ開示も同時に申し込みました。病院側の説明としては、カルテの原本はもう破棄されているが、カルテの原本をスキャンしたものはデータとして残っているのでそれを交付すると、そして診断書のほうは書ける所までは書くという説明でした。

そして後日そのカルテの写し(の写し?)と当時の診断書を受け取りに行ったのですが、診断書については視力ですとか腎臓の数値ですとかそういう重要な部分については書かれていない診断書でした。カルテのほうにそれらの数値の記載がないからなのかというとそうではなく、記載はありました。
ですので、診断書の所定の欄に数値をきちんと記載してほしいと同院の事務方通じて希望を述べました。この際のやり取りは今思い出しても腹が立ちますが、事務方のおっさんが感情的かつ高圧的に「だから最初に書ける所まで書くといっただろう?!書ける所がそこまでということなんだ!」と食って掛かってきました。
まぁ、正直今はもう来ていない患者の10年以上前の診断書を作成してくださいという依頼自体逆の立場からしたらしんどいというのはわからないではないですが、でも、カルテに記載がある部分なので、別にそれをそのまま転記すれば済む話だし、そうである以上医師法上その記載を拒むことはできないのですけれどもね。しかもこの病院公立なんですけど信じられんような対応をするなと思いました・・・。
ですので
「医師法上そこは拒めないのではないですか?」とも言ったのですけれども、やはり高圧的に
「医師法云々とか言うんだったらあとは弁護士通してやったらどないですかぁ?」と居直られました。
最終的にそこがネックになるならばそういうことも考えようと、しかし今このおっさんと話しても埒があかないと思い引き下がりました。
おっさんは興奮しすぎで、何を言いたいかよくわからないところもあったのですが、拒否の理由の一つはカルテの原本自体はもうなく、交付したものはあくまでカルテをスキャンしたものであるからということがあるのかなというのは思いました。しかし、スキャンしたものだから効力がないみたいな話もおかしな理屈だなぁと思います。まぁ、医師からしたら10年以上前に来院していたという会ったこともない患者についての責任文書として記載するわけですから、既述の通り書くのがしんどいというのはこちらとしてもわからないわけではないところで、そんな中で事務方として医師を守ろうという配慮だったのかもしれません。
というようなことがありつつ、数値の記載のない診断書と併せてカルテの写しも提出するというやり方で障害認定日請求を行いました。
しかし、結果は事後重症として1級と認定されましたが、障害認定日の障害の程度については認定できないと却下されました。

当事務所による解決 審査請求

認定日分診断書については上記の通り、形式的に不備なところがあるというのはわかりながら申請したのですが、しかし同時に添付しているカルテから障害の程度もわかるはずですので、そこは認めてほしいところだと思い審査請求することとなりました。そしてそこが認められれば少なくとも障害認定日を3級とする方向での認定は可能であろうと思える状況でした。
ですので、実質的にはカルテの原本がないといえども原本をスキャンしたものが残っていてそれを交付したというところまでは病院も認めているわけだし、形式面の不備については病院はいろいろなことを言って記載を拒んでいる部分はあるけれどもいずれにせよ結局そのことは病院の書類作成方針の問題に過ぎないのであって、請求者の障害の程度の問題とはまた別次元の問題である旨を主張しました。
すると、処分変更により認定日分の等級を3級とする決定が下りました。非常にいろんなことがありまして、受任してからここまで1年半かかりましたが、最大限有利な形で受給することができ、よかったと思います。

今回のポイント 人工物を装着したならば申請はお早めに

  • しかし、認定日請求が通ったとはいえ、5年より前の分については時効でもらえないわけですし、例えば人工透析を開始した平成19年当時に申請をしていればその時からもらえていたはずですので、トータルで見れば損をしているという見方もできます。しかも、この方の場合障害年金の制度自体は前から知っていたということですから、やはり早めに動ける場合は動いたほうがここまで苦労せずとも受給しやすいですし何かとメリットはあります。
    また、同じような事例でやたらと認定日請求を強く希望される方もおられますが、この事例のように病院関係者に無理を言う必要も生じるわけですから、スムーズにいく場合ばかりではないということもご理解いただいたほうが良いと思います。この病院の対応については腹が立っているところはあるものの、(仮に自分が医者だとして、その人のカルテはあるとしても会ったこともない患者の10年前の診断書を書いてと言われて素直にハイと言えるだろうか?)と考えると、割と毎度無理なお願いをしているのかもなぁと思います。そう思うものの、制度としてそういう有利な制度があるので仕方ないとも思う葛藤の日々です。

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